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ドイツの写真家エラスムス・シュレーター(1956-)の作品集『Im Mondschein – Fotografien aus der DDR』。旧東ドイツ・ライプツィヒで写真を学んだシュレーターは、1970〜80年代に台頭した東ドイツの若手作家写真世代を代表する存在のひとりです。当時の東ドイツ写真は人間主義的なドキュメンタリーや社会観察の伝統が主流でしたが、シュレーターはそこに演出性や実験性を持ち込み、写真表現の新たな可能性を切り開きました。1985年に西ドイツへ移住した後も、戦争や監視社会、政治とイメージの関係を問い続ける作品を発表しており、近年では東欧写真史を語るうえで欠かせない作家として再評価が進んでいます。本書は移住以前の1979〜1985年に撮影された作品を集成したもので、消滅した国家となった旧東ドイツの日常風景を内側から捉えた重要な写真集です。夜のバス停に立つ人々、社交ダンスを楽しむ男女、遊園地や湖畔に集う若者たちなど、一見ありふれた光景が被写体となっていますが、人工照明やフラッシュによって人物はまるで舞台上の登場人物のように浮かび上がります。さらに赤外線を用いた幻想的な夜景作品も収録され、記録と演出、現実と夢想の境界が曖昧に揺らぎます。体制や歴史を語る資料としてだけでなく、人々の孤独や欲望、ささやかな希望を映し出す作品として読むことのできる一冊です。