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日本の写真家・児玉房子(1945-)の作品集『クライテリア』。桑沢デザイン研究所で学んだ児玉は、都市に広がる施設や装置の周囲に漂う人の気配を静かな距離感で見つめてきた作家です。広告や編集の現場で培った観察の精度を背景に、技術と生活が交差する場所に生まれる微妙な緊張や、環境に馴染む人々の佇まいを淡々とすくい取る姿勢が特徴です。本作『クライテリア』では、研究室や清掃工場、病院、養殖場など、社会を支える多様な現場をカラーで撮影し、機能的な空間の裏側に潜む柔らかな時間を穏やかに描き出しています。装置そのものよりも、そこに寄り添う身体や空気の移ろいへ視線が向けられており、都市がもつ無機質さと人間の営みが交わる瞬間が静かに立ち上がります。説明を拒みながらも、当時の社会が抱えていた価値観や基準の揺らぎをほのかに感じさせる余白を残した一冊となっています。