Google Translate
日本を代表する写真家・荒木経惟の写真集『東京夏物語 / Tokyo Summer Story』。2003年に発行された本書は、荒木の数あるスナップ集の中でも一風変わった趣向となっており、タクシーに乗った荒木が車窓を写し出しています。タクシーのドアが写っているものなどは明らかですが、窓ごしに撮られたものは、一見、車内から撮られたものとはわからないかもしれません。車内から信号待ちをする人々や車の脇を通り抜けていく人々、繁華街から住宅街までを移動しながら切り取っていますが、巻末で本書のデザインを手がけた鈴木一誌の解説によると、撮影は6☓7判カメラ「マキナ」を2台に90ミリと55ミリのレンズを装着し行われ、タクシーは荒木の自宅から2〜3時間、都内を周遊して戻ってきたそうです。鈴木のカメラと車の親近性や、荒木の写真が孕む切断されているはずのひとコマずつにある連続性(それを〈アラーキー的魔術〉という)についてなど、解説も興味深いです。