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日本の写真家・内藤克(1965-)の写真集『Once in Harlem』。1980年代に渡米した内藤は、料理人として働きながらニューヨークで生活を始め、やがてハーレムに居を構えます。本作は、1980年代末から90年代初頭にかけて、その地に暮らしながら撮影されたシリーズをまとめた一冊です。内藤はカメラを手にしてすぐ撮影を始めたわけではなく、約2年にわたり街を歩き、人々との関係を築いたのちにシャッターを切り始めました。そこに写るのは、ポーズを取る住民たちの肖像、通りに立つ若者、静かな街角、夜の気配など、再開発以前のハーレムに流れていた時間そのものです。屋外に即席の背景を設置したポートレートにはリチャード・アヴェドンを思わせる正面性もありますが、内藤の写真には演出以上に、共同体の内部へゆっくり受け入れられていった者だけが持ち得る親密さと温度が漂います。ジェントリフィケーションによって大きく変化する直前のハーレムを記録した作品であると同時に、異邦人として他者と向き合い続けた写真家自身の時間も刻まれた重要作です。