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20世紀を代表する写真家ロバート・フランク(1924–2019)の作品集『Mary’s Book』。本書は、1949年パリ滞在中に後に妻となるアーティスト、メアリー・フランクへ贈るために制作された私家版アルバムをもとに構成された一冊です。街の情景や静物を写した小さなプリントに、手書きの言葉や紙片を貼り重ね、若き日の感情や思索を“本というかたち”に託した作品であり、後の代表作『The Americans』へと続く表現の萌芽を垣間見ることができます。人の不在を通して人の存在を示すような画面構成には、同時期にパリで親交を持ったエリオット・アーウィットらとの影響も感じられ、写真的観察と詩的構築のバランスがすでに確立されています。写真と言葉、記憶と時間が交錯する本書は、フランクが写真家としての道を切り拓く前夜に生み出した、最も親密で実験的な作品であり、彼の創作の原点を記す貴重なアートブックです。