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日本の写真家・野村次郎(1972-)の作品集『茜と梅』。東京に生まれ、「夜の写真学校」で学んだ野村は、2009年に「遠い眼」でVisual Arts Photo Award大賞を受賞。身近な人々や日常の風景を題材にしながら、親密さの奥に潜む距離や不安、生と死の気配を静かなモノクロームで捉えてきました。本書は、野村が長年撮り続けてきた家族との時間をまとめた一冊。タイトルの「茜」は妻の名であり、「梅」は彼らの暮らす郊外の家を取り巻く梅林へとつながります。妻や家族のポートレート、室内、幾度も現れる窓からの眺め、噴き上がるように咲く梅、水の渦、雪のなかの犬。それらは等しく移ろう存在として並び、最も身近な人々を撮りながらも、画面には静かな緊張と微かな隔たりが漂います。前作『遠い眼』にも登場していた茜や家族への眼差しが、歳月とともに深められた作品でもあります。日々のなかに避けがたく流れる時間と存在の危うさを見つめながら、それゆえに際立つ生命の光を掬い上げた一冊です。帯欠。