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日本の写真家・柴田慶子の作品集『Ancient Ray』。柴田は1990年代後半から岐阜県揖斐川町春日地区に通い続け、土地に暮らす人々の語りや記憶、伝承に耳を傾けながら制作を続けてきた写真家です。単なる地域記録や民俗資料としてではなく、人から人へ受け継がれてきた言葉や記憶を写真として写し取ろうとする独自の実践で知られ、後の『聞き写し、春日』やニコンサロンで発表された『古い生命』へとつながる一連の仕事によって高く評価されました。写真を現実の記録装置としてだけではなく、目には見えない時間や気配を呼び起こす媒介として捉える姿勢は、一貫して柴田の制作の核となっています。本作もまた、その探求の重要な一冊です。タイトルが示す「太古の光」は、現在という瞬間に届く遥かな時間の痕跡を想起させ、風景や自然、人の存在を通して過去と現在、生と死、記憶と現実が静かに交差する世界を描き出しています。私家版ならではの親密な佇まいのなかに、土地に蓄積された記憶と人間の営みを見つめ続けてきた柴田のまなざしが凝縮されており、その後の代表作群を理解するうえでも重要な位置を占める作品集です。