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セルビア出身の写真家ブギー(1969-)の作品集『Sao Paulo』。ユーゴスラビア内戦下のベオグラードで写真を始め、のちにニューヨークへ移住したブギーは、都市の周縁に生きる人々や社会の緊張が表出する場所を一貫して撮り続けてきました。『It's All Good』『Belgrade Belongs to Me』などでも知られ、ストリート写真とドキュメンタリー写真の間を往来しながら、都市の表層ではなく、その奥に潜む人間の感情や現実に迫る作品で高く評価されています。本書はブラジル最大の都市サンパウロを舞台に制作されたシリーズで、急速な経済発展の一方で深刻な格差や貧困を抱える巨大都市の日常を見つめています。街角にたむろする若者たち、労働者、路上生活者、落書きに覆われた壁面や荒廃した風景などが、力強いモノクロームで記録されており、都市全体に漂う緊張感とエネルギーが濃密に伝わってきます。しかし本書が捉えているのは社会問題そのものではなく、その環境の中で生きる人々の存在感や眼差しです。被写体との距離の近さから生まれる親密さと不穏さが同居し、現代都市が抱える複雑な現実と人間のたくましさを静かに浮かび上がらせる一冊です。