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イタリアの写真家・ルイジ・ギッリの作品集『Colazione sull’Erba』。ギッリは1970年代以降、身近な風景や日常の中に潜む人工性と詩情を独特の視点で捉えた作風で知られ、ヨーロッパ写真界におけるコンセプチュアルな風景写真の先駆者として高く評価されてきました。絵葉書や看板、建築物、郊外の風景などを通じて、見るという行為そのものに問いを投げかける彼の作品は、詩的でありながら批評性も兼ね備えています。本書は、1970年代初頭に撮影されたシリーズをもとに、2019年にMACKより刊行された再構成版で、タイトルはエドゥアール・マネの名画『草上の昼食(Le Déjeuner sur l’herbe)』を想起させるものとなっています。ギッリが撮影したのは、モデナ近郊に広がる芝生や生け垣、無人の椅子や庭先のオブジェといった、ごく日常的でありながらどこか空虚で曖昧な空間。自然と人工、現実と虚構が交錯するそれらの風景には、ユーモアと郷愁、そして都市化の進むイタリア社会への静かな眼差しが感じられます。初期作品の中でもとりわけ詩的な魅力を放つ本作は、ギッリの世界観を知る上で欠かせない一冊です。