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その独特な風貌とともにアラーキーの愛称で知られる、日本を代表する写真家・荒木経惟。本書『Love on the Left Eye』は、2014年にタカ・イシイギャラリーにて行われた展覧会に合わせて刊行された写真集です。その前年、2013年に網膜中心動脈閉塞症のため右眼の視力を失った荒木。それでもそのハンディを逆手に取り、創作を続け、生まれたシリーズが本作となります。閉ざされた自身の右眼の視野を感じさせる右半分が黒く塗られたこのシリーズは、撮影したポジフィルムの右半分を塗りつぶしてプリントされた作品です。鮮明な左側と塗りつぶされた右側という対比は、荒木が自身の写真で扱ってきた生と死(エロスとタナトス)の隠喩とも考えられています。ガンを患い、視力を失い、身体的な不自由に抗うようにいや増す創作意欲と、逆境をはねのけるような機転、そして逆境までも創作の一部としてしまう胆力は、荒木という写真家の偉大さを物語っているように感じます。いつもながらの造語のタイトルは、エド・ファンデル・エルスケンの名作より捩っています。開期早々に完売した希少な一冊。300部限定。