Google Translate
日本の写真家・本田辰巳(1929-)の写真集『炭鉱往歳』。福岡で生まれ、父親の務めていた筑豊の貝島炭礦第六抗に勤務していた本田辰巳。1962年の閉山とともに大阪で就職していますが、米兵が持っていたカメラや、朝日新聞で報道カメラマンをしていた叔父の影響もあり、50年代半ばにカメラを手にし、仕事の傍らで本格的に写真を撮り始め(国画会会員・田中幸太郎に師事)、90年代に入ってから各地で個展を開催しています。本書は、本田が暮らし、働いていた街や炭鉱の様子を写し出した作品集。60年代の写真が多く収められているほか、90年代に現地に訪れ、その変わり様を写したものが最後にまとめられています。ボタ山に囲まれた炭鉱町の日常をはじめ、炭鉱夫であった本田ならではの現場の情景をストレートに切り取っているほか、石炭から石油へとエネルギーの転換が叫ばれ、閉山へと追い込まれるのを防ぐための労働者たちの闘争などを記録しています。家族写真のように単に記録されたものもありますが、スナップの構図がとても巧く、炭鉱というテーマの社会性だけでなく見応えのある1冊です。