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日本の写真家・奥村久美子の写真集『Isokon』。大学卒業後就職するも、退職してイギリスへと渡り、ロンドン芸大で写真を学んだ奥村久美子。本書は、平間至写真賞の受賞作として出版されたものだと思われます。Isokon Flatとはロンドンにあるアパートメントのことであり、80年代から廃墟になっている建物のこと。1934年に建設されたモダニズム建築で、知識人やアーティストが、ロンドン滞在の際に利用し、食堂やバーも併設され、ちょっとしたサロンのような場所として機能したそうです。本書は、1969年に閉鎖され、廃墟となって放置されていたIsokonを撮影した作品集です。柔らかな日差しが印象的な室内空間を、ときに同じようなフレーミングで切り取り、そこに遺された品々や備え付けられた設備を写し出しています。多くの廃墟と同じく、壁は朽ち、窓は外れ……といった状況にあって、陽光を浴びたレースのカーテン、壁紙やタイルの装飾、可愛らしいランプのシェードなど、当時を忍ばせるモダンさがそこかしこに姿を見せ、かつての文化的な香りとともにノスタルジックな風景として立ち上がってきます。