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アメリカの写真家ピア=ポーリナ・ギルモスの作品集『Flowers Drink the River』。ギルモスはメイン州の小さな田舎町を拠点に、自然と身体のあいだに生まれる儀式性や、共同体とともに生きる時間の感触を濃密に写し取ってきた作家です。本作は、トランス女性として移行を始めた最初の2年間に、彼女が身を置く保守的で右翼的な小さな町の風景と、そこで支え合う親密なコミュニティを撮影したものです。露に濡れた森、泥や石に包まれた身体、燃え盛る家、クモの糸や蛾、夜の動物たち——こうした強烈なモチーフが、大判カメラと緻密なアナログ技法によって神秘的な光景として立ち上がります。ギルモスは花やクモの糸で精巧な小さな彫刻をつくり、風や水、光、あるいは迷い込んだ生き物がそれに触れる瞬間を静かに待つなど、自然との協働による制作を続けており、その忍耐深い関わりが写真に独特の気配を与えています。人・動物・土地の境界が月明かりの中で曖昧になり、恐れと美しさが交差するなかで、ギルモスは身近な世界の奥にひっそりと潜むユートピアを探り当てています。