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アメリカの写真家ハル・フィッシャー(1950-)の作品集『The Gay Seventies』。フィッシャーは1970年代半ばにサンフランシスコへ移り住み、写真家であると同時にアート評論家としても活動しながら、当時のゲイ・コミュニティを独自の視点で記録しました。コンセプチュアルアートや記号論の影響を受けた彼の作品は、単なるドキュメンタリー写真とは異なり、人々の服装や髪型、仕草、アクセサリーといった細部に潜む社会的な意味を読み解こうとする試みとして高く評価されています。なかでも代表作『Gay Semiotics』は、カストロ地区に集う男性たちのスタイルを写真とテキストによって分析した画期的なシリーズであり、今日ではクィア表現史における重要作として位置付けられています。本書は1977年から1979年にかけて制作された主要なフォトテキスト作品を初めて総覧するもので、『Gay Semiotics』をはじめ、『Boy-Friends』『18th Near Castro Street x 24』『Cheap Chic Homo』などを収録しています。1969年のストーンウォール以後、そしてAIDS危機以前という束の間の自由な時代に花開いたサンフランシスコのゲイ文化を、ユーモアと知性を交えて記録した内容は、当時のコミュニティの空気を伝える貴重な証言であると同時に、人々がどのように自己を表現し、仲間を認識していたのかを探る文化史的資料としても極めて興味深い一冊です。