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旧ソ連・シベリア生まれの写真家ニコライ・バハレフ(1946-)の写真集『Cheryomushki』。幼少期に孤児となり国家施設で育ったバハレフは、1970年代にシベリアの工業都市ノヴォクズネツクで労働者として働く一方、国営写真サービスのカメラマンとして学校や工場の公式肖像を撮影していました。本作は、ソ連体制が揺らぎ始めた1980年代、労働者や家族連れが集った河川や湖畔のビーチ「チェリョームシキ」で撮影されたシリーズをまとめたものです。当時のソ連では裸体表現は厳しく制限されていましたが、こうした水辺は、束の間の解放感と親密さが許される数少ない公共空間でもありました。抱き合う恋人、酒を酌み交わす友人、子どもを見つめる親たち――そこに写るのは、イデオロギーではなく、人々の身体と感情が持つ静かな温度です。被写体を観察対象ではなく「共に写真を作る存在」と捉えたバハレフの視線は、ぎこちなさと親密さが入り混じる独特の距離感を生み出しています。ソ連末期の日常の奥にあった、小さな自由と人間関係の気配を静かに浮かび上がらせた一冊です。