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イギリスの写真家Martin Parrの作品集『Thinking of England』。1970年代以降、カラー写真を用いて日常の消費文化や余暇、階級意識といった英国社会の断面を継続的に記録してきたパーは、ドキュメンタリー写真の文脈にユーモアと距離感を持ち込み、観察と関与の間を行き来する独自の立ち位置を築いてきました。本書は、これまでの代表的シリーズから「イングランド」という主題に焦点を当てて再編集された一冊で、海辺のリゾート、祝祭の場、日常の何気ない身振りなどが並置されます。そこに写るのは、誇張でも断罪でもない、むしろ複数の視点が交錯する英国の姿であり、見る者は笑いや違和感を覚えつつ、自身の視線のあり方を問い返されることになります。写真史的には、社会を批評の対象としてではなく、観察の対象として捉え直した点に本書の意義があり、単一の「国民性」では回収できないイングランド像が、編集を通して静かに立ち上がってきます。